思い出せない恋人より、忘れられない人がいる ――記憶喪失の秘書は冷徹社長に溺愛される
空気が、冷たくなる。

どうしてそんなことを聞くのだろう。

「……はい。恋人、ですから」

答えながら、少しだけ戸惑う。

当たり前のことを言っているはずなのに。

なぜか、胸の奥がざわつく。

新太は、しばらく何も言わなかった。

ただ、じっとこちらを見ている。

その視線に、息が詰まりそうになる。

やがて。

「……そうか」

もう一度、同じ言葉を繰り返した。

けれど今度は、どこか突き放すような響きだった。

「仕事に支障が出ないなら、構わない」

それだけ言うと、視線を落とす。

完全に、会話を終わらせる態度。

「……失礼します」

私はそれ以上何も言えず、頭を下げて部屋を出た。

ドアを閉めた瞬間、心臓が、大きく跳ねた。
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