思い出せない恋人より、忘れられない人がいる ――記憶喪失の秘書は冷徹社長に溺愛される
優しい。とても、自然な気遣い。

「……疲れてない?」

ふと覗き込むように聞かれる。

「大丈夫です」

そう答えると、祐樹は安心したように笑った。

その笑顔に、少しだけ胸が緩む。

優しい人だと思う。

私のことを、よく知っている人。

「はい、千紗の好きなカフェ・オレ」

館内のカフェで、目の前にカップが置かれる。

「ありがとうございます」

一口飲む。ほっとする味。

確かに、好きだと思う。

こうして自然に選んでくれるところも、きっと長く一緒にいたからなのだろう。

「祐樹は何が好きなの?」

何気なく聞くと、彼は少しだけ笑った。

「俺はブラック。クリーム入り」

「え?」

思わず顔を上げる。

ブラックなのに、クリーム入り?

その言い方に、ほんの少しだけ引っかかる。
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