思い出せない恋人より、忘れられない人がいる ――記憶喪失の秘書は冷徹社長に溺愛される
過去を埋めるように、言葉が重なっていく。

それなのになぜだろう。

安心するはずなのに、どこか、足りない。

触れているのに、届かないような。

そんな違和感が、胸の奥に静かに残っていた。

美術館を出ると、外はすっかり夕暮れに染まっていた。

オレンジ色の光が街を包み込み、影が長く伸びている。

並んで歩きながら、私は何度も今日の出来事を思い返していた。

祐樹は優しい。

気遣いもできるし、私のこともよく知っている。

きっと――いい恋人なのだと思う。

そう、思うのに。

胸の奥に、うまく言葉にできない違和感が残っていた。

「……どうした?」

祐樹が横から覗き込む。

「いえ……なんでも」

首を振る。その瞬間だった。

ふいに、腕を引かれる。

バランスを崩した私を、そのまま引き寄せるようにして――
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