思い出せない恋人より、忘れられない人がいる ――記憶喪失の秘書は冷徹社長に溺愛される
それから数日。社長との距離が、明らかに変わった。

「……この書類、こちらに置いておきます」

社長室に入っても、以前のように近くに来ることはない。

必要最低限のやり取りだけ。視線も、ほとんど合わない。

「確認しておく」

それだけ言って、すぐに書類へと目を落とす。

淡々とした声。いつも通りのはずなのに。

どこか、冷たい。

「……はい」

短く返して、私はその場を離れる。

ドアを閉めたあと、胸の奥がじんわりと重くなる。

――どうして?

何か、してしまったのだろうか。

考えれば、思い当たることはひとつしかない。

「……彼氏が」

あの日、そう言った時の社長の表情が浮かぶ。

動揺。苛立ち。そして――押し殺した何か。

それ以来、彼は変わった。

話しかければ答えてくれる。
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