思い出せない恋人より、忘れられない人がいる ――記憶喪失の秘書は冷徹社長に溺愛される
「三年、付き合ってるんです……」

震える声で、私は言った。

その事実にすがるように。

揺れている自分を、繋ぎ止めるように。

「くっ……それは、違う!」

社長の声が、鋭く響く。

「社長に何が分かるんですか」

気づけば、涙が零れていた。

止めようとしても、止まらない。

「事故で記憶喪失になった私を、見捨てなかったんです」

祐樹のことを思い浮かべる。

支えてくれた人。受け入れてくれた人。

それは、確かなこと。

「違う、違うんだ……!」

次の瞬間、強く引き寄せられた。

「……っ」

社長の腕の中。逃げられないほどに、抱きしめられる。

「他の男と結婚しないでくれ」

耳元で、低く囁かれる。

その声は、震えていた。

「社長……」

名前を呼ぶ。こんなにも必死な声を、初めて聞いた。
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