思い出せない恋人より、忘れられない人がいる ――記憶喪失の秘書は冷徹社長に溺愛される
待ち合わせたレストランは、静かで落ち着いた雰囲気だった。

柔らかな照明に包まれた店内。

けれど、私の胸の中はざわついたままだった。

「……千紗」

席に着くと、祐樹がゆっくりと口を開いた。

その視線は、どこか覚悟を決めたように真っ直ぐだった。

「ねえ、祐樹。あのね……」

言わなければ。そう思って、口を開く。

けれど。

「知ってるよ」

その一言で、言葉が止まった。

「……え?」

「俺の他に、好きな人がいること」

静かに、淡々と。

まるで当たり前のことのように言う。

何も言えなかった。見透かされている。

隠していたつもりなのに。

全部、知られていた。

「それでもいいんだ」

祐樹は、微笑んだ。優しい顔。

でも、その奥にあるものが見えない。

「千紗が、俺の側にいてくれれば」
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