思い出せない恋人より、忘れられない人がいる ――記憶喪失の秘書は冷徹社長に溺愛される
静かに、けれど確実に告げられる事実。

「ご両親に、直接な」

「え……!」

驚きで言葉が出ない。

「お父さんとお母さんは……社長のこと、知ってたんですか!」

「直接は会っていない」

社長は首を横に振る。

「だが、親父が一方的に話した」

その先に続く言葉は、あまりにも残酷だった。

――お嬢さんは、うちの息子をたぶらかしてるんですよ。

ー ……そんな

胸が締めつけられる。

ありもしないこと。

そんな言葉を、両親に。

――そんなはずありません!

必死に否定する声が、耳の奥で響いた気がした。

それが、自分のものだったのかどうかも分からない。

「……そんな時だった」

社長の声が、静かに落ちる。

「それを聞いた千紗が、家を飛び出したと」

その一言で、空気が変わる。

冷たい風が吹き抜けたような感覚。
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