思い出せない恋人より、忘れられない人がいる ――記憶喪失の秘書は冷徹社長に溺愛される
けれど、その一つひとつに、どこか温かさがあった。

案内されるままに、私は自分のデスクへと向かう。

そこには、まるで時間が止まっていたかのように、整えられた空間があった。

書類の配置も、ペンの位置も、すべてが“そのまま”。

まるで、いつでも戻って来られるようにと、誰かが守ってくれていたかのように。

「……ここが、私の」

小さく呟くと、光林社長が頷く。

「確か君は、業務のマニュアルを作っていたはずだ。それを見れば、ある程度は思い出せる」

「はい……」

デスクの引き出しを開けると、整然とまとめられたファイルが目に入る。

自分が作ったもののはずなのに、まるで他人の仕事を見ているようだった。

それでも、一つひとつ目を通していくと、不思議と手の動かし方は分かる。

「……こう、ですね」

書類をまとめ、必要なデータを確認する。
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