思い出せない恋人より、忘れられない人がいる ――記憶喪失の秘書は冷徹社長に溺愛される
離れたくないと、心から思って。

しばらくそのまま、静かな時間が流れる。

何も言わなくても、通じ合っている気がした。

やがて、新太が少しだけ顔を離す。

「……この後、俺の家に来ないか?」

優しく問いかける声。

でも、その奥には確かな想いが込められている。

「……はい」

迷うことなく、頷いた。

それが、今の私の答えだった。

新太の表情が、柔らかく緩む。

次の瞬間、自然に、唇が重なった。

優しく、確かめるようなキス。

でもその奥にある想いは、深くて強い。

もう、迷わない。もう、離れない。

私たちは、同時に笑った。

同じ気持ちを確かめるように。

これから先も、ずっと一緒にいられると――信じられる笑顔で。
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