思い出せない恋人より、忘れられない人がいる ――記憶喪失の秘書は冷徹社長に溺愛される
「結局、千紗を諦めることなんて……無理だった」

その声は、どこまでも優しかった。

額を寄せ合う。

近すぎる距離で、見つめ合う。

甘い吐息が、静かに重なる。

「心が、また惹かれ合ったんだ」

「……うん」

自然と、頷く。

言葉なんていらなかった。

もう、全部分かっている。

「今度こそ、放さない」

低く、強く。

「千紗」

その名前を呼ばれるだけで、胸がいっぱいになる。

「……私も」

そっと腕を回す。

「放しません」

確かめるように、もう一度抱きしめる。

温もりが、重なっていく。

失ったはずの時間も。忘れてしまった記憶も。

すべてを越えて――私たちは、もう一度出会った。

その夜。

とろけるように甘く、静かな時間は、途切れることなく続いていった。

まるで夢のように。

けれどこれは――確かに、現実だった。


ー End -

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