完璧な上司に飼われてます! 〜ズボラ女子の居候日記〜【長編版】
「あと、飯は全部俺が作る」
「え、いいんですか?」
「単純に、美味い飯が食べたいからな」
「す、すみません……私、料理下手そうですよね……」
「普段、カップラーメンで済ませてるだろ?」
「はい……正直、あんまり料理はしたことないです」
同棲していた時も、料理は光市が作ってくれていた。
食べること自体は好きなんだけど……実家から離れてからは、ずっと楽して食べる道を選んできた。
完全に、見透かされている。
「まあ、それも勉強だな。料理も、徐々に覚えていけたらいい」
「……わかりました」
橋場さんは一度小さく息を吐いてから、椅子から立ち上がった。
どうやら、ルール決めはこれで終わりらしい。
「じゃあ、これからビシバシ鍛えていくぞ。仕事も普段の生活も、俺とお前は共に行動する」
「は、はい!」
背筋が、自然と伸びる。
もし橋場さんが現れていなかったら……今頃、ホテルで堕落した生活を送っていたはずだ。
そう考えると、この出会いはラッキーなのかもしれない。
それにしても、ここまできっちりした人って……一体何歳で、どんな人生を送ってきたんだろう。
キッチンへ向かおうとする橋場さんを引き止めるように、思わず口を開いた。
「あの……橋場さんって、おいくつなんですか?」
「ん? 俺は今年で二十七になった」
「ってことは……寅年ですか?」
「そうだが……」
「じゃあ、沖浦さんのちょうどひと回り下ですね! 沖浦さんも寅年なので」
橋場さんは「らしいな」とだけ答えると、ワイシャツの袖を捲り、そのままキッチンに立った。
あれ……思ったより素っ気ない反応だ。
テンションが上がったのは私だけだったみたいで、少し恥ずかしくなる。
まあ、橋場さんにとってはどうでもいいことなのだろう。
「今日は、コロッケでも作ろうか」
「え!? コロッケ大好物です!」
「なら良かった。親戚の家からジャガイモが大量に送られてきてな」
ステンレス製のボウルに、冷蔵庫の野菜室からジャガイモを数個取り出して入れていく。
あとはひき肉とタマネギも使うらしく、それらも次々とキッチンに並べられた。
ダイニングから一瞬見えた冷蔵庫の中は、一人暮らしの男性のものとは思えないほど充実している。
私は対面キッチンのダイニング側に立ち、邪魔にならないようにしながら、その手捌きを観察することにした。
「コロッケの作り方、知ってるか?」
「えーと……あんまり……」
「……だと思った。よく見ておけ」
そう言って、橋場さんは大きめのジャガイモを手に取ると、包丁で皮をするすると剥いていく。
迷いのない動きに、拍手してしまった。
「これくらいは、普通にできるようにならないとな。あと、芽も取る」
「メモ?」
「違う。メモなわけないだろ。“ジャガイモの芽”だ」
「あ、ああ! あははは……」
笑って誤魔化す私。顔はしっかり赤くなっているだろう……。
ものの数分で、ジャガイモの下ごしらえは完了したらしい。
ツッコミを入れながらも、橋場さんの手は止まる気配がない。
「鍋でこのジャガイモを塩ゆでする。その間に、タマネギをみじん切りだ」
「へ、へぇ……」
次にまな板の上に置かれたのは、タマネギだ。
それもあっという間に細かく刻まれていく。
流れるようにフライパンに火が入り、タマネギが投入された。
「え、いいんですか?」
「単純に、美味い飯が食べたいからな」
「す、すみません……私、料理下手そうですよね……」
「普段、カップラーメンで済ませてるだろ?」
「はい……正直、あんまり料理はしたことないです」
同棲していた時も、料理は光市が作ってくれていた。
食べること自体は好きなんだけど……実家から離れてからは、ずっと楽して食べる道を選んできた。
完全に、見透かされている。
「まあ、それも勉強だな。料理も、徐々に覚えていけたらいい」
「……わかりました」
橋場さんは一度小さく息を吐いてから、椅子から立ち上がった。
どうやら、ルール決めはこれで終わりらしい。
「じゃあ、これからビシバシ鍛えていくぞ。仕事も普段の生活も、俺とお前は共に行動する」
「は、はい!」
背筋が、自然と伸びる。
もし橋場さんが現れていなかったら……今頃、ホテルで堕落した生活を送っていたはずだ。
そう考えると、この出会いはラッキーなのかもしれない。
それにしても、ここまできっちりした人って……一体何歳で、どんな人生を送ってきたんだろう。
キッチンへ向かおうとする橋場さんを引き止めるように、思わず口を開いた。
「あの……橋場さんって、おいくつなんですか?」
「ん? 俺は今年で二十七になった」
「ってことは……寅年ですか?」
「そうだが……」
「じゃあ、沖浦さんのちょうどひと回り下ですね! 沖浦さんも寅年なので」
橋場さんは「らしいな」とだけ答えると、ワイシャツの袖を捲り、そのままキッチンに立った。
あれ……思ったより素っ気ない反応だ。
テンションが上がったのは私だけだったみたいで、少し恥ずかしくなる。
まあ、橋場さんにとってはどうでもいいことなのだろう。
「今日は、コロッケでも作ろうか」
「え!? コロッケ大好物です!」
「なら良かった。親戚の家からジャガイモが大量に送られてきてな」
ステンレス製のボウルに、冷蔵庫の野菜室からジャガイモを数個取り出して入れていく。
あとはひき肉とタマネギも使うらしく、それらも次々とキッチンに並べられた。
ダイニングから一瞬見えた冷蔵庫の中は、一人暮らしの男性のものとは思えないほど充実している。
私は対面キッチンのダイニング側に立ち、邪魔にならないようにしながら、その手捌きを観察することにした。
「コロッケの作り方、知ってるか?」
「えーと……あんまり……」
「……だと思った。よく見ておけ」
そう言って、橋場さんは大きめのジャガイモを手に取ると、包丁で皮をするすると剥いていく。
迷いのない動きに、拍手してしまった。
「これくらいは、普通にできるようにならないとな。あと、芽も取る」
「メモ?」
「違う。メモなわけないだろ。“ジャガイモの芽”だ」
「あ、ああ! あははは……」
笑って誤魔化す私。顔はしっかり赤くなっているだろう……。
ものの数分で、ジャガイモの下ごしらえは完了したらしい。
ツッコミを入れながらも、橋場さんの手は止まる気配がない。
「鍋でこのジャガイモを塩ゆでする。その間に、タマネギをみじん切りだ」
「へ、へぇ……」
次にまな板の上に置かれたのは、タマネギだ。
それもあっという間に細かく刻まれていく。
流れるようにフライパンに火が入り、タマネギが投入された。