完璧な上司に飼われてます! 〜ズボラ女子の居候日記〜【長編版】
橋場さんはきっちりと手を動かしながら、私の話を黙って聞いてくれていた。
炒め具合と、私の表情を交互に確認するように、視線を動かしながら。
「……ということは、解放された大学生活のせいで、今の石田が出来上がった……ってことか」
寸分の狂いもない図星が飛んできて、顔が熱くなる。
橋場さんの言うように……その反動は凄まじかった。
最悪ながらも、それまでは母の言う通りにするという、明確なルールがあった。
だけど、母という存在が遠く離れて……まさに、地獄から一気に天国へ。
そうなると、自分の幸福を優先してしまい、面倒くさいことは全部後回しにするようになってしまったのだ。
「はい……家のことなんて、今までやったことがなかった。本当に最低限だけやって、楽しむことばかり考えていたら……いつの間にかズボラな性格になってしまって」
「それでそのまま男と同棲して、そして捨てられた……ということだな」
「まさしく、その通りです」
ズボラな私になり、どん底に落ちたその背景を最後まで聞くと……橋場さんはガスコンロの火を止めた。
炒めるという工程を一度ストップさせ、真っ直ぐに私を見つめる。
「いいか、石田。この居候は、お前のためにやるんだ」
「……え?」
「お前の成長は、俺や会社のためになる。それは事実だ。ただな……今の話を聞いた以上、俺はお前の幸せのために、厳しくする」
「幸せのため?」
「今のままでは、お前は幸せになれない。過去を引きずって、卑屈になるばかりだ。そんな部下に、俺はさせたくない」
時間が止まったみたいに、意識が橋場さんだけに向いている。
その力強い瞳に、吸い込まれるかのようだ。
「だから俺を信じて、ついて来い。仕事も生活も、上手にこなせるとこんなに楽しいんだって、俺が教えてやる」
瞬きするのももったいないくらいに、その言葉を取りこぼさないように見つめている。
胸が震えるような感情が込み上げ、気づくと視界がぼやけていた。
「ほら、テーブルの上にティッシュがあるだろ。それで拭け。俺が泣かせたみたいで、居心地が悪いだろ」
「……橋場さんが泣かせたんですよ!」
橋場さんは口元を緩ませ、もう一度ガスコンロに火をつけた。
落ち着いたところで、次の工程に移るみたいだ。
私は目元の涙をティッシュで優しく拭いながら、思いついた言葉をそのまま口にした。
「あ、橋場さんのご両親は……どんなご両親だったんですか?」
その言葉を聞いた瞬間、橋場さんの緩んでいた表情がグッと引き締まった。
さっきまでの同情するような目つきが、急に鋭さを見せる。
あれ……聞いちゃまずかったかな……。
「俺の話はどうでもいいだろう。それより、続きの工程を見ておけ。料理の知識も、取材においては重要な項目だぞ」
「は、はい……申し訳ございませんでした」
その突き放すような言葉で、さっきまでの感動がすぐに引いた。
まさかの緩急に困惑しながらも、何とか気持ちを切り替える。
橋場さんの話も……今度聞いてみたいな。
そんな思いが頭に浮かぶも、すぐにフライパンの上に集中するように意識を引き戻した。
炒め具合と、私の表情を交互に確認するように、視線を動かしながら。
「……ということは、解放された大学生活のせいで、今の石田が出来上がった……ってことか」
寸分の狂いもない図星が飛んできて、顔が熱くなる。
橋場さんの言うように……その反動は凄まじかった。
最悪ながらも、それまでは母の言う通りにするという、明確なルールがあった。
だけど、母という存在が遠く離れて……まさに、地獄から一気に天国へ。
そうなると、自分の幸福を優先してしまい、面倒くさいことは全部後回しにするようになってしまったのだ。
「はい……家のことなんて、今までやったことがなかった。本当に最低限だけやって、楽しむことばかり考えていたら……いつの間にかズボラな性格になってしまって」
「それでそのまま男と同棲して、そして捨てられた……ということだな」
「まさしく、その通りです」
ズボラな私になり、どん底に落ちたその背景を最後まで聞くと……橋場さんはガスコンロの火を止めた。
炒めるという工程を一度ストップさせ、真っ直ぐに私を見つめる。
「いいか、石田。この居候は、お前のためにやるんだ」
「……え?」
「お前の成長は、俺や会社のためになる。それは事実だ。ただな……今の話を聞いた以上、俺はお前の幸せのために、厳しくする」
「幸せのため?」
「今のままでは、お前は幸せになれない。過去を引きずって、卑屈になるばかりだ。そんな部下に、俺はさせたくない」
時間が止まったみたいに、意識が橋場さんだけに向いている。
その力強い瞳に、吸い込まれるかのようだ。
「だから俺を信じて、ついて来い。仕事も生活も、上手にこなせるとこんなに楽しいんだって、俺が教えてやる」
瞬きするのももったいないくらいに、その言葉を取りこぼさないように見つめている。
胸が震えるような感情が込み上げ、気づくと視界がぼやけていた。
「ほら、テーブルの上にティッシュがあるだろ。それで拭け。俺が泣かせたみたいで、居心地が悪いだろ」
「……橋場さんが泣かせたんですよ!」
橋場さんは口元を緩ませ、もう一度ガスコンロに火をつけた。
落ち着いたところで、次の工程に移るみたいだ。
私は目元の涙をティッシュで優しく拭いながら、思いついた言葉をそのまま口にした。
「あ、橋場さんのご両親は……どんなご両親だったんですか?」
その言葉を聞いた瞬間、橋場さんの緩んでいた表情がグッと引き締まった。
さっきまでの同情するような目つきが、急に鋭さを見せる。
あれ……聞いちゃまずかったかな……。
「俺の話はどうでもいいだろう。それより、続きの工程を見ておけ。料理の知識も、取材においては重要な項目だぞ」
「は、はい……申し訳ございませんでした」
その突き放すような言葉で、さっきまでの感動がすぐに引いた。
まさかの緩急に困惑しながらも、何とか気持ちを切り替える。
橋場さんの話も……今度聞いてみたいな。
そんな思いが頭に浮かぶも、すぐにフライパンの上に集中するように意識を引き戻した。