完璧な上司に飼われてます! 〜ズボラ女子の居候日記〜【長編版】
子どもの私を支配するような嫌な母だったとはいえ、家事は全部やってくれた。
ご飯の用意も、皿洗いだって、私がしたことは一度もない。
それが母の意向だったとしても、私のために施してくれていたのは事実だ。
光市と同棲していた時も、家のことはほとんど光市がやってくれていた。光市は几帳面で、そういうのが好きなタイプだった。
毎日やってくれていると、その感謝は日に日に薄れていき……いつしか当たり前だと思うようになってしまった。
結局、甘えている部分が私の中にあったのだ。
橋場さんに言われて……気がつくことができた。
「環境のせいにするのも、良くないですよね」
橋場さんは水切りラックの上に並べられた皿をじっと見つめ、「そうだな」と短く呟いた。
その視線に緊張しながら、残りの食器も洗っていく。
「……よし、やればできるじゃないか」
「あ、ありがとうございます」
「ただ、勘違いするなよ」
「え?」
「これでお前のズボラが改善されたわけじゃない。肝心なのは、“まあいっか”精神を直すことだ」
「……そ、そうですよね」
図星すぎて、言葉に詰まる。
「人は変われるが……そう簡単には変わらない。長い長い居候生活になりそうだな」
「……頑張ります」
不安を煽られるような言葉に、顔が強張る。
私はそれ以上何も言えず、逃げるように与えられた部屋へ戻った。
橋場さんのいる空間から解放されると、すぐ横になりたいという弱い自分が顔を出しそうになる。
いやいや、それじゃダメだ。このマインドだと、いつまで経っても橋場さんから卒業できない。
とにかく、行動しないと……。
とりあえずクローゼットを開け、服をハンガーに掛け始めた。
適当に掛けていると……さっき見た橋場さんの険しい表情を思い出す。
「あ、適当じゃダメだ……」
慌てて掛け直す。
服の形が崩れないよう肩の位置を整え、間隔も少し空けて。
こういうところから、だよね……。
「あ、あれ?」
さっきまで着ていたジャケットのポケットに手を入れると、紙の感触がした。
取り出してみると、ホテルのレシートだった。
そうだ。さっき残り六泊分をキャンセルした時、払い戻しがあったんだ。
「えっと、確かカバンに……」
仕事用のカバンを開ける。
中には数枚の紙幣と小銭が、仕切りもなく無造作に放り込まれていた。
完全に、適当に突っ込んだままだった。
「……こういうところよね、私……」
小さく呟いて、苦笑する。
――こうして、少し不思議で厳しい……でも、どこか温度のある。
完璧な上司との、居候生活が始まった。
ご飯の用意も、皿洗いだって、私がしたことは一度もない。
それが母の意向だったとしても、私のために施してくれていたのは事実だ。
光市と同棲していた時も、家のことはほとんど光市がやってくれていた。光市は几帳面で、そういうのが好きなタイプだった。
毎日やってくれていると、その感謝は日に日に薄れていき……いつしか当たり前だと思うようになってしまった。
結局、甘えている部分が私の中にあったのだ。
橋場さんに言われて……気がつくことができた。
「環境のせいにするのも、良くないですよね」
橋場さんは水切りラックの上に並べられた皿をじっと見つめ、「そうだな」と短く呟いた。
その視線に緊張しながら、残りの食器も洗っていく。
「……よし、やればできるじゃないか」
「あ、ありがとうございます」
「ただ、勘違いするなよ」
「え?」
「これでお前のズボラが改善されたわけじゃない。肝心なのは、“まあいっか”精神を直すことだ」
「……そ、そうですよね」
図星すぎて、言葉に詰まる。
「人は変われるが……そう簡単には変わらない。長い長い居候生活になりそうだな」
「……頑張ります」
不安を煽られるような言葉に、顔が強張る。
私はそれ以上何も言えず、逃げるように与えられた部屋へ戻った。
橋場さんのいる空間から解放されると、すぐ横になりたいという弱い自分が顔を出しそうになる。
いやいや、それじゃダメだ。このマインドだと、いつまで経っても橋場さんから卒業できない。
とにかく、行動しないと……。
とりあえずクローゼットを開け、服をハンガーに掛け始めた。
適当に掛けていると……さっき見た橋場さんの険しい表情を思い出す。
「あ、適当じゃダメだ……」
慌てて掛け直す。
服の形が崩れないよう肩の位置を整え、間隔も少し空けて。
こういうところから、だよね……。
「あ、あれ?」
さっきまで着ていたジャケットのポケットに手を入れると、紙の感触がした。
取り出してみると、ホテルのレシートだった。
そうだ。さっき残り六泊分をキャンセルした時、払い戻しがあったんだ。
「えっと、確かカバンに……」
仕事用のカバンを開ける。
中には数枚の紙幣と小銭が、仕切りもなく無造作に放り込まれていた。
完全に、適当に突っ込んだままだった。
「……こういうところよね、私……」
小さく呟いて、苦笑する。
――こうして、少し不思議で厳しい……でも、どこか温度のある。
完璧な上司との、居候生活が始まった。