完璧な上司に飼われてます! 〜ズボラ女子の居候日記〜【長編版】
「オムハヤシね……」
SNSで店名を検索すると、やはり目に入るのは看板商品のオムハヤシを絶賛する投稿ばかりだった。
写真を眺めているだけで、じわりと空腹が刺激される。
取材前から、すでにお腹が鳴りそうだ……。
「美味しそうだな……」
思わず漏れた独り言に反応したのか、橋場さんが呆れたように笑った。
私の席の隣に立ち、モニターに映るオムハヤシの画像を一瞥しながら言う。
「石田、わかっているとは思うが……食べることに夢中になって、取材を疎かにするなよ」
「も、もちろんです! 取材は全力で臨みます」
「だといいがな」
そう言いながらも、橋場さんは仕事モードに切り替わり、淡々と説明を続ける。
「まずは店の特徴やシェフのこだわり……事前に調べた内容を踏まえて質問する。経歴を軽く振り返る程度でいい」
「そ、その流れなら、ラーメン班でもやっていました」
自信を込めて答えたものの、橋場さんはどこか信用しきれない様子で、苦笑しながら首を傾げた。
……取材の基本は理解している。
店やシェフの情報を事前に集め、それをもとに質問や記事構成を考える……その積み重ねだ。
特に取材に関しては、それなりに自信がある。
和やかな雰囲気を作るのは、得意分野だから。
「今回で俺の進め方を覚えろ。次からは、石田が主導でやってもらう」
「え……次からは、私が……」
「取材は得意なんだろ。沖浦編集長から聞いている」
「そ、そうですね……その……お店の方と仲良くなるのは、得意です」
自分で言っていて少し照れくさくなりながら、その気になって答えた。
「まあ、コミュニケーション能力は必須だからな。その点は、期待しているぞ」
橋場さんの言葉には、私も深く頷けた。
愛想よく接していると、他では語られないような裏話や、常連しか知らない裏メニューを教えてもらえることがある。
同じ取材でも、聞き手の人柄一つで引き出せる内容はまるで変わってくるのだ。
お店の人に、いかに気に入ってもらえるか……。
それが、取材を成功させる上での重要なポイントだった。
「今日は……勉強させていただきます」
橋場さんは、どんなふうに取材を進めるのだろう。
私はひたすら相手を褒めて、気持ちよく話してもらうのが信条だ。
一方で、普段からクールな橋場さんが、円滑にコミュニケーションを取っている姿は、正直あまり想像がつかない。
初めての、橋場さんとの取材……。
そう思うと、じわじわと緊張してきた。
「石田、そろそろ行けそうか? 今回は俺が主導でやる。事前準備はそこまでいらないから、店の雰囲気だけ掴んでおけ」
「あ、それなら……SNSの投稿で、ざっくり把握できています」
「よし。じゃあ移動するぞ。今回は車で行く」
「かしこまりました。場所は……神田ですね」
「ああ。二、三十分くらいで着くはずだが、道が混んでいる可能性もある。早めに出るぞ」
パソコンの入ったビジネスバッグとカメラセットを抱え、私は橋場さんの後を追う。
社用車のある駐車場へ向かいながら、心の中で小さく気合を入れた。
――よし。
今日の取材、しっかり学ばせてもらおう。
SNSで店名を検索すると、やはり目に入るのは看板商品のオムハヤシを絶賛する投稿ばかりだった。
写真を眺めているだけで、じわりと空腹が刺激される。
取材前から、すでにお腹が鳴りそうだ……。
「美味しそうだな……」
思わず漏れた独り言に反応したのか、橋場さんが呆れたように笑った。
私の席の隣に立ち、モニターに映るオムハヤシの画像を一瞥しながら言う。
「石田、わかっているとは思うが……食べることに夢中になって、取材を疎かにするなよ」
「も、もちろんです! 取材は全力で臨みます」
「だといいがな」
そう言いながらも、橋場さんは仕事モードに切り替わり、淡々と説明を続ける。
「まずは店の特徴やシェフのこだわり……事前に調べた内容を踏まえて質問する。経歴を軽く振り返る程度でいい」
「そ、その流れなら、ラーメン班でもやっていました」
自信を込めて答えたものの、橋場さんはどこか信用しきれない様子で、苦笑しながら首を傾げた。
……取材の基本は理解している。
店やシェフの情報を事前に集め、それをもとに質問や記事構成を考える……その積み重ねだ。
特に取材に関しては、それなりに自信がある。
和やかな雰囲気を作るのは、得意分野だから。
「今回で俺の進め方を覚えろ。次からは、石田が主導でやってもらう」
「え……次からは、私が……」
「取材は得意なんだろ。沖浦編集長から聞いている」
「そ、そうですね……その……お店の方と仲良くなるのは、得意です」
自分で言っていて少し照れくさくなりながら、その気になって答えた。
「まあ、コミュニケーション能力は必須だからな。その点は、期待しているぞ」
橋場さんの言葉には、私も深く頷けた。
愛想よく接していると、他では語られないような裏話や、常連しか知らない裏メニューを教えてもらえることがある。
同じ取材でも、聞き手の人柄一つで引き出せる内容はまるで変わってくるのだ。
お店の人に、いかに気に入ってもらえるか……。
それが、取材を成功させる上での重要なポイントだった。
「今日は……勉強させていただきます」
橋場さんは、どんなふうに取材を進めるのだろう。
私はひたすら相手を褒めて、気持ちよく話してもらうのが信条だ。
一方で、普段からクールな橋場さんが、円滑にコミュニケーションを取っている姿は、正直あまり想像がつかない。
初めての、橋場さんとの取材……。
そう思うと、じわじわと緊張してきた。
「石田、そろそろ行けそうか? 今回は俺が主導でやる。事前準備はそこまでいらないから、店の雰囲気だけ掴んでおけ」
「あ、それなら……SNSの投稿で、ざっくり把握できています」
「よし。じゃあ移動するぞ。今回は車で行く」
「かしこまりました。場所は……神田ですね」
「ああ。二、三十分くらいで着くはずだが、道が混んでいる可能性もある。早めに出るぞ」
パソコンの入ったビジネスバッグとカメラセットを抱え、私は橋場さんの後を追う。
社用車のある駐車場へ向かいながら、心の中で小さく気合を入れた。
――よし。
今日の取材、しっかり学ばせてもらおう。