完璧な上司に飼われてます! 〜ズボラ女子の居候日記〜【長編版】
「熱は……なさそうだな」
橋場さんの手が、そっと額に触れる。
体温を確かめるような仕草と、その真剣な横顔に目を奪われた。
「今、頭痛薬を持ってくる。今日は安静にしていろ」
橋場さんが寝室からいなくなりすぐに頭に浮かんだのは、メイクをまだ落としていないということだった。
しかも、服も外出用のまま。
こんな格好で橋場さんのベッドに入るのは、さすがに気が引ける。
ズキズキと痛むこめかみを押さえながら、私は気力だけでリビングへ向かった。
「おいおい、ダメじゃないか。動いたら」
「すいません、着替えとメイク落としだけさせてください」
橋場さんの前でスッピンになること自体は、もう慣れている。
一緒に暮らしている以上、ずっとメイクをしたままでいるなんて無理だと、とっくに割り切っていた。
橋場さんは「仕方ないな」と小さく答え、私は心配をかけないように数分で全てを終わらせた。
「橋場さんのベッドだと迷惑だと思うので、自分の部屋で布団を敷いて寝ます」
私なんて、橋場さんにとってはただの部下にすぎないし……そんな私が大事なベッドを占領するなんて……図々しすぎる。
「ベッドの方が寝やすいだろ?」
「大丈夫です」
「そ、そうか……」
私は橋場さんから受け取った頭痛薬を二錠飲んで、スマホを手に部屋へ戻った。
布団を敷き、横になる。
目を瞑った瞬間、さっきの橋場さんとのやり取りを思い出した。
「やっぱり私って、ただの部下止まりなんだよね……」
橋場さんには、大切な存在がいる。それがエマリさんだ。
彼女か、良い関係にあるだけなのかは知らない。ただ、私よりも女性として見られているのは確か。
だって私は、成長しているとはいえ、元々は自分に甘いだらしない女。
そもそも、橋場さんを好きになっていい立場じゃない。
夏希と話して、もっと橋場さんのことを知ろうと思ったのに……もう、失恋したみたいな気分になっている。
考えれば考えるほど、頭の奥がズキズキと痛んだ。
「あれ、今スマホが鳴ったような……」
ブルッという振動音が、一瞬部屋に響いた。
枕元に置いていたスマホを手に取り、画面を確認してみる。
「え……光市から?」
久しぶりに見る、このアイコン。
こんな時に、光市が私に何の用だろう……。
『ちょっと、会って話したいんだけど』
短い一文なのに、どこか切羽詰まった空気が伝わってくる。
光市が、今さら私に何を話すつもりなのか。
嫌な予感がして、私はSNSの閲覧履歴を開いた。
光市の彼女のアイコンをタップし、最近の投稿を見てみる。
「え……もう別れたの?」
そこには、光市ではない男と仲良く写っている画像がアップされていた。
文面から見ても、光市とは別れたらしい。
ということは、この光市の誘いって……。
心が波立ち、いろんな感情が複雑に混ざり合っていく。
どうすればいいのかわからなくなって、私は現実から目を背けるように布団の中に潜った。
橋場さんの手が、そっと額に触れる。
体温を確かめるような仕草と、その真剣な横顔に目を奪われた。
「今、頭痛薬を持ってくる。今日は安静にしていろ」
橋場さんが寝室からいなくなりすぐに頭に浮かんだのは、メイクをまだ落としていないということだった。
しかも、服も外出用のまま。
こんな格好で橋場さんのベッドに入るのは、さすがに気が引ける。
ズキズキと痛むこめかみを押さえながら、私は気力だけでリビングへ向かった。
「おいおい、ダメじゃないか。動いたら」
「すいません、着替えとメイク落としだけさせてください」
橋場さんの前でスッピンになること自体は、もう慣れている。
一緒に暮らしている以上、ずっとメイクをしたままでいるなんて無理だと、とっくに割り切っていた。
橋場さんは「仕方ないな」と小さく答え、私は心配をかけないように数分で全てを終わらせた。
「橋場さんのベッドだと迷惑だと思うので、自分の部屋で布団を敷いて寝ます」
私なんて、橋場さんにとってはただの部下にすぎないし……そんな私が大事なベッドを占領するなんて……図々しすぎる。
「ベッドの方が寝やすいだろ?」
「大丈夫です」
「そ、そうか……」
私は橋場さんから受け取った頭痛薬を二錠飲んで、スマホを手に部屋へ戻った。
布団を敷き、横になる。
目を瞑った瞬間、さっきの橋場さんとのやり取りを思い出した。
「やっぱり私って、ただの部下止まりなんだよね……」
橋場さんには、大切な存在がいる。それがエマリさんだ。
彼女か、良い関係にあるだけなのかは知らない。ただ、私よりも女性として見られているのは確か。
だって私は、成長しているとはいえ、元々は自分に甘いだらしない女。
そもそも、橋場さんを好きになっていい立場じゃない。
夏希と話して、もっと橋場さんのことを知ろうと思ったのに……もう、失恋したみたいな気分になっている。
考えれば考えるほど、頭の奥がズキズキと痛んだ。
「あれ、今スマホが鳴ったような……」
ブルッという振動音が、一瞬部屋に響いた。
枕元に置いていたスマホを手に取り、画面を確認してみる。
「え……光市から?」
久しぶりに見る、このアイコン。
こんな時に、光市が私に何の用だろう……。
『ちょっと、会って話したいんだけど』
短い一文なのに、どこか切羽詰まった空気が伝わってくる。
光市が、今さら私に何を話すつもりなのか。
嫌な予感がして、私はSNSの閲覧履歴を開いた。
光市の彼女のアイコンをタップし、最近の投稿を見てみる。
「え……もう別れたの?」
そこには、光市ではない男と仲良く写っている画像がアップされていた。
文面から見ても、光市とは別れたらしい。
ということは、この光市の誘いって……。
心が波立ち、いろんな感情が複雑に混ざり合っていく。
どうすればいいのかわからなくなって、私は現実から目を背けるように布団の中に潜った。