完璧な上司に飼われてます! 〜ズボラ女子の居候日記〜【長編版】
第七話 そっけない彼女 ~橋場律人side~
――ここ最近、石田の様子がおかしい。
「石田。次月号の特集だが、各班の企画書をまとめてくれるか」
「かしこまりました」
「ん? もうこんな時間か。企画書は昼休憩の後にしよう。社食、一緒にどうだ?」
「すいません、遠慮しておきます。近くにまぜそば屋ができたので、そっちに行きます」
予想外の返答で、思わず石田を二度見してしまった。
俺の誘いを断るなんて……これまで一度もなかったはずだ。
それだけじゃない。どこか表情も硬いし、目も合わせようとしない。
明らかに、距離を置かれている。
やっぱり俺……何かやったか?
「そ、そうか。じゃあ戻り次第、企画書に取りかかってくれ」
石田はそそくさとデスクを離れ、そのままオフィスを出ていった。
表情から人間味が抜け落ち、やり取りも必要最低限で……事務的な会話しか成立しない距離になってしまっている。
どうしてこうなったのか……はっきりと覚えているのは、あの日を境に様子が変わったということだ。
石田が激しい頭痛に襲われた日。
大体、一週間くらい前か。
あの日、石田は寝込み……目を覚ました頃には、すでに俺への態度が変わっていた気がする。
それまでは快活で、相変わらず大雑把なところを見せては、俺が一喝する……そんなやり取りが当たり前だった。
でも、そのようなかけ合いをすることはほとんどなくなり、石田の表情からは明るさがすっかり消えている。
「やはり、何かあったのかな……」
あの陽気さがないだけで、こんなにも気にかかるものなのか。
石田らしいミスやズボラさも、ほとんど見せなくなって……人が変わってしまったようだった。
本来ちゃんとした大人になることを目的に居候させているはずなのに、指摘する部分が少なくなるとそれはそれで寂しく思う。
俺に言えない悩みでもできたか……もしくは俺についていけなくなったか……。
あの態度を見る限り、後者の可能性の方が高い。
早く一人前になって、ここから出ていきたいと思っているのかもしれない。
「卒業、か……」
デスクに肘をつき、ぼんやりとモニターを眺める。
刻々と、昼休憩の時間は過ぎていた。
空腹で腹がゴロゴロと音を立てているけれど、そんなの気にはならなかった。
今はただ、石田のことだけを思い浮かべている。
あれ、どうして俺……石田のことばかり考えているんだろう。
何より食事が最優先だったはずの俺の思考を、今は石田が占めている。
あいつが家を出ていく光景を思い浮かべた瞬間、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。
こんな不思議な気持ち、抱いたのは初めてだ。
「ダメだ、埒が明かない。こうなったら、相談するしかないか……」
一人で抱え込んでいても、どうにもならない。
本来こういうのは性に合わないが……今回は、頼るしかなさそうだ。
「石田。次月号の特集だが、各班の企画書をまとめてくれるか」
「かしこまりました」
「ん? もうこんな時間か。企画書は昼休憩の後にしよう。社食、一緒にどうだ?」
「すいません、遠慮しておきます。近くにまぜそば屋ができたので、そっちに行きます」
予想外の返答で、思わず石田を二度見してしまった。
俺の誘いを断るなんて……これまで一度もなかったはずだ。
それだけじゃない。どこか表情も硬いし、目も合わせようとしない。
明らかに、距離を置かれている。
やっぱり俺……何かやったか?
「そ、そうか。じゃあ戻り次第、企画書に取りかかってくれ」
石田はそそくさとデスクを離れ、そのままオフィスを出ていった。
表情から人間味が抜け落ち、やり取りも必要最低限で……事務的な会話しか成立しない距離になってしまっている。
どうしてこうなったのか……はっきりと覚えているのは、あの日を境に様子が変わったということだ。
石田が激しい頭痛に襲われた日。
大体、一週間くらい前か。
あの日、石田は寝込み……目を覚ました頃には、すでに俺への態度が変わっていた気がする。
それまでは快活で、相変わらず大雑把なところを見せては、俺が一喝する……そんなやり取りが当たり前だった。
でも、そのようなかけ合いをすることはほとんどなくなり、石田の表情からは明るさがすっかり消えている。
「やはり、何かあったのかな……」
あの陽気さがないだけで、こんなにも気にかかるものなのか。
石田らしいミスやズボラさも、ほとんど見せなくなって……人が変わってしまったようだった。
本来ちゃんとした大人になることを目的に居候させているはずなのに、指摘する部分が少なくなるとそれはそれで寂しく思う。
俺に言えない悩みでもできたか……もしくは俺についていけなくなったか……。
あの態度を見る限り、後者の可能性の方が高い。
早く一人前になって、ここから出ていきたいと思っているのかもしれない。
「卒業、か……」
デスクに肘をつき、ぼんやりとモニターを眺める。
刻々と、昼休憩の時間は過ぎていた。
空腹で腹がゴロゴロと音を立てているけれど、そんなの気にはならなかった。
今はただ、石田のことだけを思い浮かべている。
あれ、どうして俺……石田のことばかり考えているんだろう。
何より食事が最優先だったはずの俺の思考を、今は石田が占めている。
あいつが家を出ていく光景を思い浮かべた瞬間、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。
こんな不思議な気持ち、抱いたのは初めてだ。
「ダメだ、埒が明かない。こうなったら、相談するしかないか……」
一人で抱え込んでいても、どうにもならない。
本来こういうのは性に合わないが……今回は、頼るしかなさそうだ。