完璧な上司に飼われてます! 〜ズボラ女子の居候日記〜【長編版】

第八話 勘違い

 あ……やってしまった。
 電気の消えたリビング。テーブルに突っ伏していた私は、重たい体を起こした。
 その拍子に、背中へかけられていたタオルケットが床へ滑り落ちる。

「橋場さんが、かけてくれたんだ……」

 テーブルの上のビニール袋も、キッチンに置きっぱなしだったカップラーメンの残骸も、綺麗に片づけられていた。
 私……カップラーメンを食べ終えて、一息ついたところで、そのまま寝落ちしたんだ……。
 だらしない姿を、橋場さんに見せてしまった。

 深夜、三時。
 静まり返った部屋を見渡しながら、自分の失態にじわじわと羞恥が込み上げてきた。

「シャワー……浴びないと」

 バスルームに入ると、まだ少しだけ湿気が残っていた。
 熱いシャワーを頭から浴びながら、こうなってしまった流れをぼんやりと思い返す。

 仕事終わり、橋場さんから安斎さんと飲みに行くというメッセージが入った私は、すぐにスーパーに向かった。
 久しぶりに暴飲暴食するチャンスがきたと、浮かれ気分になったのを覚えている。
 ここ最近の私は、考えすぎて頭がパンクしそうだった。
 そのストレスを、晩酌と締めのカップラーメンに全部ぶつけようとしたのだ。

「だって、しょうがないよね……」

 橋場さんに、半ば勝手に失恋したような気分になって……どうしようもない孤独感に襲われていた。
 そんな中届いた、光市からのメッセージ。
 最初は、とにかく会って話したいという光市のメッセージを無視していた。
 傷心した状態で、光市と向き合う気力なんてなかったから……。
 それでも、痺れを切らした光市の、”もう一度、やり直してみたい”という一文で……心が激しく揺れ動いた。

「明日、絶対浮腫むな……」

 シャワーを終え、ドライヤーをかけながら鏡を見る。
 すでに目の周りが腫れ気味で……鏡の中の自分に自己嫌悪を覚えた。
 こんな醜い私を、橋場さんに見せてしまったのか……。
 まあでも、もう橋場さんに好かれようとする必要はなくなった。
 どう思われようと……関係ない。
 自分の部屋に戻って布団を敷き、中に潜り込む。

「……よし、返信しよ」

 目を閉じる前に、スマホを手に取った。
 今ようやく、光市に返信する決心がついた。
 やっぱり、一度ちゃんと会って話した方がいい。
 このまま中途半端な気持ちを抱えたままじゃ、前に進めない気がした。

 回りくどい言葉なんて、もう考える余裕はなかった。
 ただ光市の言う通り、会って話そうと答えるだけ。
 すると、こんな時間だというのにすぐに既読がついた。
 まるで、ずっと私からの返信を待っていたかのようだ……。

 流されるようにやり取りが続き、気づけば今日の夕方に会う約束まで決まっていた。
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