完璧な上司に飼われてます! 〜ズボラ女子の居候日記〜【長編版】
 言葉が詰まり、しばらく無言になった。
 テーブルの一点を見つめながら、頭の中で言い訳を考える。

 自分を変える努力なんて……したくない。

 何かに抑圧された生活は、まっぴらごめんだ。
 だって、私の人生だから。自由に、ありのままで生きていたい。

 私はもう、実家で暮らしていた時のような……あの苦しさは味わいたくない……。

「いや、いいんです。私の体はもう……ズボラに生きるようにプログラミングされてるんです。だから……ほっといてください」

 自分でも驚くほど、きつい言い方だった。
 だけど橋場さんは、私の強気な態度にも引かず、ほんの少しだけ笑みを浮かべて近づいてくる。
 私のすぐ隣に立ち、テーブルに手をついた。
 見下ろす形になって、自然と息が詰まる。

「今後、どうするつもりだ? 住む家もないんだろう? その様子だと、金にも余裕はなさそうだな」

「……そうですけど、何とかするしかありません」

「生きるのもギリギリな石田と……」

 低い声が、静かに続く。

「綺麗でしっかりした女性といい感じの、彼……」

 ズキッと、胸が痛む。橋場さんの冷ややかな声が、頭上から降り注ぐ。

「――本当に、それでいいのか?」

 ……もう、しつこいな。

 本音では、そう叫びたかった。
 けれど相手は、新しく決まった上司。そんな失礼なこと、口に出せるはずもない。

 せめてもの抵抗として、私は橋場さんの視線から逃げるように、ぷいっと顔を背けた。
 その様子を見て、橋場さんは軽く鼻で笑う。

 そして一言。

「変わろうじゃないか」

 あまりにも力強い声だった。
 思わず、外したばかりの視線を戻してしまう。
 橋場さんは、冗談の欠片もない真剣な表情で、私を見ていた。

「……え?」

「もう、適当はやめろ。しっかり成長して、その彼を見返してやれ」

「見返す……?」

 その言葉に、思考が止まった。
 見返すなんて発想、一ミリも浮かんだことはなかった。

 私は変われない。変わりたくない。
 だから、ずっと負けたまま生きていくんだって……どこかで諦めていたのに。

「人は、変われるぞ」

「……そうでしょうか」

「ああ。お前の根本が変わらない限り、いい仕事はできない。その生活態度が、仕事に悪影響を与えてる。だからな……」

「……だ、だから?」

「俺が、お前を鍛えてやる」

 ギラギラした視線に、息を呑んだ。
 橋場さんが、私を……鍛える?
 それって、一体どういう意味?

「石田……」

 私を見下ろしていた中性的な顔が、ゆっくりと近づいてくる。
 え、ちょっと待って。
 距離、近くない?
 ドキドキが一気に加速して、呼吸を忘れそうになる。

「な、何ですか……」

 気弱な声で問いかけると、橋場さんは爆弾のような言葉を落とした。

「――お前、俺の家に住め」

 ……え?

 ええっ!?
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