完璧な上司に飼われてます! 〜ズボラ女子の居候日記〜【長編版】

最終話 完璧な上司のおかげで変われました

「おめでとう、石田さん。橋場君と付き合うことになったんでしょ?」

 会社近くにある、土鍋ご飯が売りの定食屋で、沖浦さんとランチタイム。
 どうやら、橋場さんと付き合うことになった話は、すでに沖浦さんの耳にも入っているらしい。

「は、はい! よくご存じで」

「橋場君から聞いたわ。あの人、律儀だから。わざわざ報告してくれたのよ」

 付き合い始めて、まだ三日しか経っていないのに……もう報告したんだ。
 橋場さんは、沖浦さんにいろいろ相談していたと言っていたし、上司への報告は早い方がいいと考えたのだろう。

「お待たせしました。サバの味噌煮定食です」

 店員さんの声で、会話が一度途切れる。
 沖浦さんが軽く手を挙げた。

「続いて、和風おろしハンバーグ定食です」

 今度は私の前に、お盆が置かれる。
 土鍋で炊いたご飯は、見るからにふっくらとしていて美味しそうだ。
 小鉢には冷奴と卯の花。それに味噌汁。
 私たちは食事を始めながら、再び話を続けた。

「橋場君、結構慎重だったものね。それだけ、自分の性格に愛想を尽かされる未来が怖かったのよ」

「トラウマがあるって聞きましたけど……私は他の女性とは違いますよ」

「……石田さんは、橋場君の几帳面なところにも屈しないってことね?」

「はい。そんなことで嫌いになったりしません」

 沖浦さんは口元に手を添えながら、上品に笑った。
 冷たいお茶をひと口飲み、喉を潤してから「さすがね」と答えてくれる。

「何はともあれ、想いが通じ合ってホッとしたわ。これからも二人で協力して、仕事を盛り上げていってよね」

「もちろんです。仕事を疎かになんて、絶対にしません」

「まあ、橋場君がそういうタイプじゃないからね。変わらずやってくれるとは思うけど……」

 沖浦さんの言う通りだ。
 付き合うことになったからといって、橋場さんが私に甘くなったわけではない。
 今日だって、いつも通り雷を落とされた。
 記事に載せる写真のサイズを間違えただけなのに、細かい部分まで気を配れていないと、小一時間説教されたばかりだ。

「石田さんにも、期待しているからね」

「……お任せください!」

 自然と頬を緩ませながら、温かいご飯を口に運ぶ。
 沖浦さんの優しさも相まって、胃の辺りがすごく温かく感じた。

 最初に橋場さんが言ってくれた通り……仕事もプライベートもきちんと向き合うようになってから、毎日が驚くほど楽しい。
 居候生活を通して、ここまで成長できるなんて思ってもみなかった。
 今こうして充実した日々を送れているのは、間違いなく橋場さんのおかげだ。

 そう考えていると、急激に橋場さんが愛おしくなった。
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