スパダリ救急医はシンデレラと双子ベビーに深愛を注ぐ
「光莉もゆっくり休んで。おやすみ」
「――柚木くんっ」

 離れかけていた彼を呼び止めると、耳に懐かしい穏やかな低音が返ってくる。

「ん?」

 背の高い彼が目線を合わせるために、少しだけ腰を折って顔を近づけてくれる。
 大好きだった、彼の仕草。かつてと同じように高鳴ってしまう自分の鼓動には、気づかないふりをする。

「どうかした?」

 さっき病院で光莉を呼び止めたとき。

『話がしたい。少しだけでいいから』

 彼はそう言ったのだ。でも結局ホテルのラウンジでしたのは、光莉側の話ばかりだった。

「その、柚木くんの話って?」
「あぁ」

 困ったように彼は目を伏せる。

「具体的に〝なにを〟ってわけじゃなかった。光莉がどうしているのか、ずっと気にかかっていたから」
「――ごめんなさい」

 それしか言えなかった。あんな去り方をしたら、優しい彼がどれほど心を痛めるかわかっていたのに。奏真の手がそっと動く。かつていつもしていたように、光莉の頭に触れそうになって、すんでのところで指先を折る。

「もし再会できたら、ひと言くらいは文句をつけてやろうと思ってた。けど家を失ったと聞いてしまっては……それもできないな」

 いたずらっぽく笑って彼は肩をすくめた。

「今夜はなにも考えなくていいから、ゆっくり休むんだ」

 光莉はコクンとうなずき、これだけは伝えようと口を開く。

「本当にありがとう。急なトラブルで混乱してたから……助かった」

 琥珀色の瞳が柔らかく細められる。

「ほかの誰でもない、光莉だから。前に言っただろう? 俺は絶対に光莉の味方だって」

 切なく、美しい笑み。胸がギュッと引き絞られるように痛む。奏真が優しければ優しいほどに、過去が光莉を苛んだ。


                                    ~~続きは文庫版でお楽しみくださいませ~~

 






 




 




 
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