総長は、私にだけ甘すぎる。
彼は私を見ていない。

なのに――

なぜか、守られている気がした。

「この女は関係ない」

その一言が、胸に刺さる。

彼は一歩だけ近づき、耳元で静かに言った。

「二度とここに来るな」

低くて冷たい声。

それなのに、なぜか優しく聞こえた気がした。

黒いコートが夜に溶けていく。

私はその場に立ち尽くしたまま動けなかった。

心臓だけが、うるさい。
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