推しの妻になりました〜アイドルと契約結婚〜
第24話 東堂紗良

あの後、どうやって仕事をこなしたのかよく覚えていない。
休憩中に調べた彼女の経歴は輝かしかった。
東堂紗良(とうどうさら)、25歳。
如月家に並ぶ名家で華々しい経歴の持ち主。
文武両道で学生時代はいつもトップ。
乗馬と体操が得意で、かつては全国大会にも出場していた。
社交界デビューを果たした後は自身のブランドを立ち上げ成功させている。
どこを見ても自分とは天と地の差。
なにもかも劣る。
「調べるんじゃなかった……」
気付けば帰路だった。
重い足取りでマンションの扉を開けた。
「……ただいま」
無意識に出る挨拶。
誰もいなくても習慣になっている。
だけどこの日は違った。
「おかえり」
いつもなら遅いはずのTOMAが、今日は苺依よりも先に帰宅していた。
「……っ!? TOMAさん、今日は早かったんですね」
「ああ。仕事が早く片付いたからな」
TOMAは短く答えると、無造作に雑誌をめくり始めた。
苺依は安堵しつつ、内心の動揺を隠してキッチンへ向かう。
「お腹、空いてますか? 何か作りましょうか」
「いや、後でいい。それより……」
キッチンに向かってきたTOMAはテーブル越しに苺依を見つめた。
「いちご…………様子が変だが何かあったか?」
「え……? な、なにも……ないですよ」
「嘘だな」
「嘘じゃ……」
「東堂紗良」
――ビクッ!
その名前を聞いただけで、苺依の体が強張る。
そしてTOMAは確信した。
「やっぱりな。来たんだろ」
「……いいえ、特に何も。いつも通りの一日でしたよ」
努めて明るく、作り笑いを浮かべる苺依。
TOMAは腕を組み深くため息をついてじっと苺依を見つめた。
「来たんだな。あんたが嘘ついてんのは分かってる。予想はしてたんだ」
「…………」
答えきれずに俯く苺依にTOMAが近寄る。
「……苺依。隠し事はナシだ。俺に迷惑がかかるって思ってんのか?」
――To be continued