推しの妻になりました〜アイドルと契約結婚〜
第25話 隣に立つ覚悟

「……苺依。隠し事はナシだ。俺に迷惑がかかるって思ってんのか?」
「……っ、そんなこと、ないです……! でも、私は……」
苺依が言葉に詰まると、TOMAは苺依の顎をクイと持ち上げ、逃げ場のない距離で視線を合わせた。
「なあ、苺依。勘違いするなよ」
TOMAの真剣さに苺依は息を飲む。
「俺が隣に置きたいのは、あいつみたいな『完璧な飾り』じゃねぇんだよ。俺の……本当の姿を知りながら、それでも泥にまみれて食らいついてくる、あんたがいいんだ」
TOMAは苺依の手を強く握りしめ、言葉を噛みしめるように続けた。
「……何かあったら俺に言え。勝手に一人で溜め込んで、勝手に諦めるんじゃねぇ……俺と、あいつらと対等に戦う覚悟があるなら、俺の隣にいればいい」
それは、「守る」という甘い言葉よりも、ずっと重く、そして誠実な言葉だった。
「……っ、そんなの、最初から戦う覚悟でここにいます」
「なら、俺を頼れ。……俺が一番、あんたの味方なんだよ」
TOMAは呆れたように笑いながら、苺依の額に自分の額をコツンと合わせた。
「……ったく。泣くなよ」
「っ……泣いてません」
「はっ……そうかよ」
凍てついた苺依の心は、TOMAの温もりで少しだけ溶けていく。
いつの間にかTOMAに優しく抱き締められていて、その温度によりかかる。
トクトクと脈打つTOMAの鼓動が心地よくて。
苺依はその胸に顔を埋めた。
「…………」
「…………」
どれくらいの間、そうしていたかは分からない。
不意に降ってきたTOMAの言葉で苺依は我に返った。
「おい、いちご……飯、まだかよ」
「あ……すみません! すぐ用意します!」
苺依はTOMAを跳ねのけ急いで支度にとりかかった。
「…………」
消えた小さなぬくもり。
TOMAは苦笑をこぼして右手のひらをじっと見つめた。
「……あー、クソ……」
小さく息を吐いて呟いたTOMAは……
「……足りねぇよ、全然」
残った熱を閉じ込めるように、そっと手を握りしめた。
――To be continued