推しの妻になりました〜アイドルと契約結婚〜
第27話 オフライン②

「観たい映画があるんだ」
そう言ってたTOMAと午後はソファに並んで映画を観た。
大きなポップコーンの袋を抱えたTOMAが、リモコンを適当に操作する。
気づけば、苺依の隣にぴったりとくっつくようにTOMAが座っていた。
(なんでまだ距離近いの……全然映画に集中できないんだけど)
この何とも言えない甘い空気に契約結婚だということを、一瞬だけ忘れそうになる。
映画の内容なんて一ミリも頭に入ってこない。
隣にいるTOMAの体温と、かすかな柔軟剤の香りが苺依の思考を麻痺させる。
「……なあ」
不意にTOMAが苺依を見つめた。
その瞳は、いつになく穏やかで深い。
「映画、つまんねえ?」
「え、いや、そんなことないですけど」
「さっきから画面睨んでっけど?」
「う……」
それはあなたのせいです、なんて言えっこない。
「顔、強張ってんぞ」
ぷにっと苺依の頬をつつくTOMA。
「ちょっと! やめてください。映画観るんじゃ……」
「観るよ。でも……」
TOMAはそのまま、苺依の腰に腕を回してぐいっと力を込めた。
「……こういう距離感、そろそろ慣れろよ」
「っ、そんなの、慣れるわけないじゃないですか」
「婚約者なのに?」
「……無茶、言わないでください」
苺依はもう映画の音さえ耳に入らなくなっていた。
「あんた……」
静かなリビングに、映画の効果音だけが響く。
「可愛いな」
さらりと言われた言葉に、苺依の顔が一気に赤く染まる。
「……っ、いきなり、何言ってるんですか……!」
「ははっ……照れんなよ。いちごの顔、本物の苺みたいに真っ赤だぞ」
「からかわないでください」
「はいはい。ほら続き……観ようぜ」
TOMAは意地悪く笑うと苺依の頭を乱暴に、けれど優しく撫でた。
からかわれているのか、本気なのか分からない。
困惑する苺依を横目に、TOMAは少しだけ照れたように、けれど確かな独占欲を滲ませて彼女をさらに深く抱き寄せた。
――To be continued