恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
「ひとりで泣かないでくれ。俺にも、その気持ちを分けてくれ」

 龍臣さんは私の頬に触れたまま、じっと私を見つめ続ける。それで、再び涙がこぼれてしまう。

「龍臣、さん……」

 そうこぼすと、彼の顔が近づいてきた。

 トクトク、トクトク。
 彼を間近に感じ、鼓動が甘く速まる。

 そっと目を瞑ると、柔らかいものが私の唇に触れた。

 このキスは、彼の策略? 家族の印?
 それとも――。

 いや、そんなことは考えたくない。
 今はただ、彼の優しい温もりを感じていたい。

 彼のキスは一瞬で、すぐに離れていってしまった。
 それが寂しくて目を開くと、彼は今度は私を優しく抱きしめた。

「俺が、詩音の家族だ」

 彼の優しい声色が、彼の胸から伝わる鼓動のリズムが、私にひとりじゃないと伝えてくれる。
 それだけで、彼がいてくれてよかったと思う。

 ああ、もうごまかせない。演技だとしても、構わない。
 そう思ってしまうほど、私は彼のことがすごく――。

 静かな波の音を聞きながら、私はしばらくの間、彼の腕に体を預けていた。

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