恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 祖母はどうやら、そんなことまで彼に話していたらしい。
 恥ずかしいけれど、龍臣さんは穏やかな顔をしている。だからつい、彼の顔をじっと見てしまう。

「時子さん、幸せそうな顔をしていた。詩音と時子さんの間には、いつも優しい時間があったんだな」

 波の音の間に聞こえる、優しい彼の声。
 彼はそんなことまでわかるほど、頻繁に祖母のもとに通ってくれていたのだろう。

「……はい」

 祖母との思い出を今、こうして彼と共有できていることが、なんとなく嬉しい。

 私も海を眺めながら、祖母と過ごした日々を振り返る。すると、涙がほろりとこぼれてしまった。

 龍臣さんはそれに気づいて、繋いでいたのと反対の手で私の頬をそっと拭ってくれる。
 その優しい触れ方に、つい胸が疼いてしまった。

 本当の優しさではないかもしれない。彼がベイショアERに残るための、手段なのかもしれない。
 それでも、この優しさは心地よい。

 彼へと目を向けると、思ったよりも近くで目が合った。
 すると彼の口元が、優しく弧を描く。

「詩音はひとりじゃない。俺がいる」

 彼の言葉は、繋がれた手から伝わる彼の温度は、そっと私の心を包んでくれるよう。

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