恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 すかさず丸井さんがそれをとる。パイロットと整備士は、もう部屋を飛び出していた。

 私は急いでドアノブに手をかけた。
 丸井さんがこちらに状況を知らせた後、すぐに飛び出せるようにだ。龍臣さんも、私のそばで控える。

「覚知要請。生浜(ういはま)交差点で交通事故、大人二名、子ども一名が乗った乗用車がトラックの下敷きになっている」

「了解」

 丸井さんの声に、龍臣さんはすぐ答えた。

 しかし、私は動くことができなかった。
 かつての自分の身に降り注いだあの事故が――両親を喪い、私だけが助かったあの事故が、脳裏に再生されてしまったのだ。

 つい、体が震えてしまう。
 呼吸が速まり、頭が真っ白になってしまう。

「詩音、行くぞ!」

 間近で響いた、龍臣さんの大きな声。それで、現実に引き戻された。

 行かなくては。

 彼はドアノブにかけていた私の手に自分の手を重ね、そこを回す。
 そのまま私の手を引き、扉の向こうに引っ張り出してくれる。

「行きます!」

 ヘリへと走り出す彼の背中を追いかけ、私も階段を駆け上った。

 私たちが乗り込むと、ヘリコプターはすぐにベイショアERを飛び立った。

 上昇するヘリの中、私は先ほどの丸井さんの言葉を思い出し状況を整理する。

 覚知要請ということは、消防指令室から直接ドクターヘリの要請があったということ。つまり、消防もまだ現地に到着していないということだ。
 通報の内容から、重傷患者がいることを想定したのだろう。

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