恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
「え……?」

 フライトナースはフライトドクターと行動をともにするのが原則だ。
 にもかかわらず、龍臣さんは続ける。

《患者家族のメンタルケアを任せる。こちらはひとりでも大丈夫だ。ベイショアに戻れば、俺もひとりじゃない》

 その強い言葉に、胸が熱くなった。

 私の迷いは、間違ってない。その子にしっかり寄り添ってやれ。
 そう、言ってくれているような気がしたのだ。

「了解しました」

 言いながら、まだ処置をこなす龍臣さんを見る。

 彼は一度こちらに目を向け、こくりと頷いてくれた。
 しかし、それは一瞬。彼はすぐにいつもの真剣な顔で、患者をストレッチャーにのせている。

 私は救急隊に断って、救急車に乗り込んだ。男の子を私の隣に座らせ、しっかりとシートベルトを締めてあげる。

 痛み止めの点滴が効いているのか、父親は落ち着いていた。
 自分の名前を父親に呼ばれると、男の子も少し安堵したのか静かになった。

 サイレンを鳴らし街を走る救急車に揺られる。
 救急車でも、ここからベイショアERまでは十五分ほどかかる。
 すると、男の子は徐々に不安そうな顔を見せた。

「おかあさんは?」

「お母さんは、お医者さんと一緒にヘリコプターで病院に向かってる。君とお父さんも今から同じところに行くから、会えるよ」

 私はできるだけ、笑顔を彼に向けた。それでも、男の子は寂しそうな顔をする。
 当たり前だ。さっきまで、家族で一緒にいたのだから。

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