恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 これはまずい!

 男の子の血圧は跳ね上がっており、逆に脈が落ちていたのだ。
 事実を救急隊員に伝え、ベイショアERに繋いでもらう。その応答を待つ時間が、もどかしい。

「クッシング現象……」

 つい、独り言ちた。
 この子はおそらく、事故に遭った際に頭を打っていたのだろう。

 打撲時の脳の出血がゆっくりだと、脳を圧迫し始めてから症状が出ることがある。
 子どもの頭蓋骨は柔らかいから、こういうことは珍しくない。

 一刻も早く、処置をしてあげたい。だけど、ドクターの指示がなければナースは動けない。

 どうか早く、ベイショアに繋がって!

 するとその時、ヘルメットの無線から声が聞こえた。

《こちらベイショアER宇田川。守山、聞こえるか》

 龍臣さんだ。ドクターヘリの無線が、まだ繋がっていたのだ。

「こちら守山。宇田川先生、聞こえます!」

 慌てて応答する。すると、救急隊の無線にも同じ声が入った。こちらの無線も、まだ切れていない。

「五歳の男の子、意識なし。血圧一八〇脈動四〇。クッシングが疑われます」

 急いで現状を伝える。

《挿管できる隊員はいるか?》

「おります!」

 救急隊がそう叫びながら、挿管用の機材を探し始める。

「私、小児用持ってます!」

 慌てて声をあげた。ウエストポーチに、小児用の挿管キットを入れたままであると思い出したのだ。

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