恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 最初からそうだとわかっていたのに、今さらショックを受けているなんて馬鹿みたいだ。
 それでも心が彼を求めてしまったのだから、もうどうしようもない。

 泣きそうなのに自嘲の笑みがこぼれ、同時に目頭がかっと熱くなった。

 口を開いたら涙がこぼれてしまいそうだ。
 なにも言えずに黙っていると、お兄さんがにやりと口角を上げた。

「龍臣との結婚は、偽装だったと父にバラす。龍臣にも宇田川病院に来てもらう。いいよね?」

「ダメです!」

 つい、大きな声を出してしまった。

 お父さんにこの結婚が偽装だと知られてしまっては、彼の立場がなくなってしまう。

 私はじっと、お兄さんを睨むように見つめた。
 彼は一度目を見開いたけれど、すぐ面白そうに笑って私に告げた。

「へえ、反論するんだ。だったら――」

 彼はそこまで言うと、私の腕をやっと離して顎に手を置く。
 そしてその口角をにやりを上げ、口を開いた。

「偽装だと父さんに言わない代わりに、君は龍臣と離婚して」

「……っ!」

 呼吸が一瞬止まってしまった。
『離婚』の二文字に、心臓がナイフで刺された心地がしたのだ。

 しかし、お兄さんはくつくつと笑う。

「簡単にできるよね? ふたりは〝偽装〟の関係なんだから」

 無理だ。今の私にとって、もう彼への気持ちは〝偽装〟ではない。

 だけど、今ここでそれを言っても仕方ない。
 黙ったままでいると、彼は私の気持ちをさらに抉るように、愉悦の滲んだ笑みを向ける。

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