恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 次の日は当直当番だった。
 私は午後からの仕事に向かう前にこっそりと市役所に寄り、離婚届を用意した。

 龍臣さんは今日から二日連続でフライト当番。すれ違ってしまうが、そのほうが私には都合がよかった。
 もう二度と彼と関わらないように生きていこうと、心に決めていたからだ。

 彼との結婚を終わりにしたら、この気持ちにも終止符を打つつもりだ。
 だけど、彼と顔を合わせてしまっては、彼に焦がれてしまう。彼と離れがたくなってしまう。

 当直開け、私は眩しい日差しを浴びながら帰宅した。

 龍臣さんは今頃、きっとどこかで命を救っているのだろう。
 朝からドクターヘリのホットラインが鳴っているのを、ナースステーションで聞いた。

 私は部屋に入るとまず、ご飯をつくった。

 共同生活の中で一番嬉しかったのは、お揃いのお茶碗でご飯を食べられたことだ。
 龍臣さんはいつも率先してご飯をつくってくれたし、彼のごはんはいつも美味しかった。

 だからこれは、そのお返しだ。

 つくったおかずを保存容器に詰め、調理台の上で冷ます。その間に、テーブルの上に食器を並べた。

 彼の汁椀、箸、それに彼の分だけの夫婦茶碗――。

 手を動かしながらも、ここにひとり分しか並んでいないのを見て、彼はどう思うだろうとつい考えてしまう。
 彼にとっては元の生活に戻るだけで、それ以上の意味などないとわかっているのに。

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