恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 それから、荷造りをした。
 持ってきたものはもともと少ないが、それでもひとつひとつ詰めていくと感慨深いものがある。

 夫婦茶碗は、丁寧に包んだ。このくらい、彼との思い出があってもいいだろう。
 私が、初めて好きになった、私の夫だった人なのだから。

 それを終えると、私はリビングに行き、離婚届を記入してそこに置いた。
 隣には、彼への手紙も添えた。

 ふと窓の外に目を向ける。太陽の光を浴びた東京の街は、今日もきらきらとしていた。

 初めてここに来たときは、こんな気持ちになるなんて思わなかった。
 生活感のないと思ったこの部屋も、白を基調とした家具たちも、この景色も、今はもうすっかり見慣れた風景に変わってしまった。

 これ以上、気持ちがあふれないうちに。決心がぶれないうちに。
 私はこの光景を心の奥の引き出しにしまい、お兄さんにメッセージを打った。

【お話したいことがあります。今から、お会いできませんか?】

 彼は今日、非番だ。きっと、すぐに反応してくれるだろう。

 案の定、お兄さんからはすぐに返信が届いた。

 病院から少し離れた場所にある、海沿いのバーにひとりで来て欲しいとのことだ。
 私は荷物を詰めたスーツケースを手に、指定されたバーへ向かった。

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