恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 すると彼は、口角に皺を刻む。

 それで心臓が不快なリズムを刻み始めたが、ここで負けてはいけない。
 私はスーツケースを持つ手に力を入れ、続けた。

「最初は愛なんてありませんでした。私にも、結婚したい理由があったんです。でも彼は、結婚生活の中で、何度も私を支えてくれました」

 言いながら、彼と過ごした毎日が胸にあふれてきた。

 祖母の前で見せてくれた笑顔。
 お父さんの前で言ってくれた、志が一緒だということ。

 結婚式について、真剣に考えてくれたこと。
 祖母が亡くなってからも、ずっとそばで支えてくれたこと。

 日常の業務でも、私を支えてくれた。
 夕日を見ながら、キスをした。
 あの事故の搬送の時は、私の気持ちを汲んでくれた――。

 脳裏に浮かぶ、優しい彼の姿。
 この思い出があれば、私は大丈夫だ。

 だから意を決して、口を開く。

「龍臣さんにそんなつもりはなかったのかもしれませんが、それでも私は、彼のことを本当に好きになってしまいました」

 誰にも告げたことのない、本当の気持ち。
 口に出したらこの恋を諦めなければならないのだと実感してしまい、胸がずきんと鈍く痛む。

 それでも。

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