恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 救急に対する、ナースとしての自分の思いよりも、龍臣さんのために動きたい。
 それが、彼を愛してしまった私が出した結論だ。

「どうかお願いします、お兄さん」

 震える声で、付け加えた。
 だがその直後、聞こえてきたのは思いもよらぬ言葉だった。

「だって。龍臣、どうする?」

 つい頭を上げる。
 お兄さんは私の背後に向かって、口角を上げて微笑んでいた。

 まさか……。

 ぎょっとしながら背後を振り返る。

 龍臣さんがそこにいた。彼は怒りを孕んだ瞳で、お兄さんを見る。

 きっと、急いで来てくれたのだろう。
 彼の手には、私が記入し家に置いてきたはずの、離婚届が握られている。

「離婚も退職もさせない。俺もベイショアERを辞めない。それだけだ」

 龍臣さんはお兄さんを睨みつつ、早足でこちらに近づいてくる。
 それから、強引に私の腰をぐっと抱き寄せ、後ずさった。まるで、お兄さんから引きはがすように。

 思わず彼を見上げる。すると、彼は私の瞳を見つめ、真剣な顔で言った。

「俺だってずっと、詩音が好きだったんだから」

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