恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
「俺の力じゃない。時子さんの生命力と、芦田先生の腕のおかげだろう。俺はあの時、たまたま近くにいただけだ」

 宇田川先生らしい言葉だと思った。彼は普段から、自分の手柄に興味がない。

 以前彼とドクターヘリで現場に向かっていた時、彼は無線で救命士に指示を出しただけで、地上に降りずに戻ってきたことがある。
 患者にとって、そのほうがよいと判断したのだ。

 この場合、ドクターヘリの実働例数には入らない。
 フライトドクターとしての実績を積めば、出世できるにもかかわらず、彼はそうした。

 彼は自分の手柄よりも、病院に戻り次の出動に備えることを優先したのだ。

 ことごとく、大病院の息子とは思えない。
 きっと先ほど彼の顔が綻んでいると思ったのは気のせいで、あのつぶやきも幻聴だろう。

「それでも、応急処置してくれたのはあなたです。本当に、ありがとうございました。唯一の家族を、喪わなくて済みました」

 宇田川先生のおかげだ。
 そう伝えたくて口にしたものの、そのせいで余計に不安に煽られた。

 祖母は、私の唯一の家族だ。今は大丈夫でも、もしこの後、容態急変があったら……。

 つい涙がこみ上げてしまい、それを下唇を噛んで必死にこらえた。
 ERの看護師として、ともに空を飛ぶ仲間として、彼にこんな顔を見せるわけにはいかない。

 足元を見て顔に力を入れていると、突然、頭の上になにかがぽすんとのった。

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