恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 胸が緊張で妙な音を立て、つい膝の上でこぶしを握ってしまう。すると、私の背に宇田川先生の手がそっと触れた。そのまま、彼は口を開く。

「詩音さんと、結婚したいと思っています。認めていただけませんでしょうか?」

 頭を深々と下げる宇田川先生に続き、私も頭を下げた。胸がちくりと痛んだけれど、祖母のために、私はやるしかない。

「お願いします、おばあちゃん」

 しかし、祖母はなにも言わない。

 不思議に思って顔を上げると、祖母はなぜかぽかんとしていた。だがしばらくの後、肩を大きく揺らして笑い出す。

「認めないわけないじゃない。そんなに改まらなくてもいいのにって、つい」

 よほど面白かったのか、祖母はひいひい笑っている。だけどひと呼吸置いてから、私たちに優しく微笑んでくれた。

「もちろんよ、ふたりの結婚を祝福します。ああ、詩音の花嫁姿、楽しみだわ」

 そんな祖母を見ていると、元気になってくれてよかったと心から思う。

「これからも長生きしてね、おばあちゃん」

「もちろんよ! リハビリ、もっと頑張らなくっちゃ。詩音の結婚式には、ちゃんと立って歩いて参列したいもの」

 祖母は両腕を折り曲げて、力こぶをつくるポーズをする。

 宇田川先生はそんな祖母にくすりと笑みをこぼし、こちらを見た。彼は視線で、私の持っていたバッグを指し示す。

 私は慌てて、鞄からA4サイズの封筒を取り出し彼に手渡した。中身は〝婚姻届〟だ。すでに彼が記したものを私も記入し、持ってきたのだ。

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