恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 あれは今から、半年ほど前のこと。
 もう誰もが彼女をフライトナースとして認め、彼女の優秀さを当たり前にしている中の出来事だった。

 その日の俺はフライトドクター勤務。フライトナースは詩音だ。

 ドクターヘリは日没とともに運航を終える。その日も無事運航を終え、俺はフライト待機室で書類仕事を片づけてから、医局へと向かった。

 三階建てのベイショアERには従業員専用階段が備わっているが、その二階から上階を使うのはフライトチームに限られていた。

 フライトチームは出動要請があれば即刻ドクターヘリに乗り込まなければならない。走ることも多いから、安全のためにそうなっているのだ。

 俺はいつものようにフライト待機室を出て、二階の医局に向かおうとした。
 しかし従業員専用の階段に差し掛かったところで、屋上に続く階段の踊り場に小さくうずくまる影を見つけた。

 急患かもしれない。そう思い、慌ててそちらへ向かう。

 しかし、見えたのは紺色のフライトスーツだった。
 背中のワッペンには、大きく『ドクターヘリ』のロゴが入っている。

 もしかして、彼女か?

 はっと足を止めたが、俺の足音に気がついたのか、影の主が顔を上げこちらを見る。

 案の定、詩音だった。

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