恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 脳外科医の芦田先生に処置を引き継ぐと、とにかく今は彼女に祖母の近くにいてほしいと、俺はヘリ当番を他のナースに頼み彼女に仕事を休ませた。

 祖母がいなくなってしまったら、彼女は潰れないだろうか。心配である。

 祖母が助かったことは院内の連絡で知ったが、それでも詩音への心配は絶えない。
 業務を終えた俺は、面会時間ぎりぎりを狙ってICUへ向かった。

 廊下で出会った詩音は、ひどく落ち込んでいるように見えた。
 だが俺が彼女の名前を呼ぶと、彼女はいつもの顔で俺に礼を告げ、丁寧に頭を下げてくる。

 それでも、彼女が少しだけ不安そうに口元を歪ませたのを、俺は見逃さなかった。

 こんな時にまで、強がるなよ。

 俯いた彼女の頭に、つい自分の手をぽんとのせる。思ったよりも小さくて、心許なかった。
 こんなに小さな体で、ひとりきりでこの事態に耐えているなんて。

『不安は抱え込むな。看護師だって人間だ。俺でよければ、聞く』

 せめて、俺の前では肩肘張らずにいてほしい。彼女の心を、守りたい。
 そんな思いで告げ、俺は彼女を焼き肉に誘った。彼女が肉好きであることは、ERでは有名だ。

 するとそこでも、詩音は泣きそうな顔で俺に礼を伝えてくる。
 そんな彼女の健気さに、俺は心を打たれた。

 どうにか彼女の役に立ちたい。
 そういう思いでいろいろと言葉を重ねていると、彼女は涙をほろほろと流しながら、自分の思いや心残りを話してくれた。

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