恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
「はい」

 電話を切り、横居さんに会釈してナースステーションを出る。
 それからナースバッグをヘリに戻すと、今度はベイショアERの三階から渡り廊下を通り、静和大学附属病院本棟へと移動した。

 今日は、祖母が外来受診でここに来ている。
 ヘリも飛ばないようだし、どうせなら様子を見に行こうと思ったのだ。

 祖母は高血圧のため、この病院に通院している。
 今はお昼少し前。帰り際の祖母に、きっと会えるだろう。

 渡り廊下からは、今日もちらりと東京湾が見えた。

 静和大学附属病院は都心にほど近い、千葉県の湾岸エリアに位置している。そのため、三階からはこうして海が見える。

 穏やかな日差しに誘われたのか、目下の公園では子どもたちが元気に走り回っている。
 その様子に、今日は本当に平和だなと思ってしまう。

 いや、これはフラグかもしれない。私はつい緩んでしまった気を引き締めた。

 静和大学附属病院は、地域の医療と先端技術の発展に貢献している病院だ。
 特に私の属するベイショアERはドクターヘリを保有していることもあり、湾岸エリアのあらゆる救急患者に対応している。

 今は落ち着いていても、いつ何時救急車がやってくるかはわからない。
 風がやめば、ドクターヘリにも再び出動要請がかかるだろう。

 私は自身のフライトスーツを見下ろし、ポケットのお守りを取り出した。

< 6 / 144 >

この作品をシェア

pagetop