恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 コンロで火にかかっていたお鍋からは、お出汁と味噌の香りがしてくる。
 すると、彼はそれもふたつのお椀についでゆく。

 その光景を、私はカップを握りしめたまま凝視してしまった。

 もしかして、これは朝ご飯……?

 首を傾げていると、彼はそれらをお盆にのせてこちらへやってきた。お盆の上には、納豆と卵焼きものっている。

「時間が無くても、朝ご飯は大事だからな」

 龍臣さんは言いながら私の隣を通りすぎ、ダイニングにそれを並べる。

「今日は詩音も日勤だろう? 早く食べないと、遅れるぞ」

 キッチンの横に立ち尽くし彼の姿を目で追っていると、彼はそう言ってこちらを向いた。

「すみません。今度は私も、ご飯つくりますね」

 彼ばかりにやらせてしまうのは申し訳ない。そう思って告げたのに、彼はきまりが悪そうにこちらを見る。

「いや、詩音は無理しないでくれ。同居を強いているのは俺だ。できるだけ、こういうこともしようと思っている。不便なことがあったら、ぜひ伝えてくれ」

 龍臣さんはそう言い、さっさと椅子に座ってしまう。

「ほら、詩音も」

「……はい、ありがとうございます」

 申し訳なさを感じつつ、私は彼の前に腰掛けた。

< 67 / 144 >

この作品をシェア

pagetop