恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 午前中はあんなにのんびりとしていたERは、午後は怒涛の急患ラッシュだった。それをのり越え、今はもう終業時刻間際だ。

 ナースステーションにある自分のデスクで入力業務を済ませていると、不意にナースステーション内がざわついた。

 受付に顔を向ける。するとそこには、私服に着替えた龍臣さんが立っていた。

「詩音、帰るぞ」

 それで、ナースステーション中の視線が一斉にこちらを向く。

「え、宇田川先生もう帰られるんですか?」

 思わず、そう聞いてしまった。
 彼はいつも、遅くまで医局にいるイメージだ。私自身も症例を調べて遅くなることがあるから、なんとなくそんな感じなのだろうと思っていた。

「仕事が終わったら、普通は帰るだろう。詩音ももうすぐ終業時間だろう。迎えにきた」

 彼は淡々とそう言ったが、私は気まずくなってしまった。
 まだ、備品の補充が終わっていない。先に今日運ばれてきた患者の症例を振り返っていたら、補充は後回しになってしまっていたのだ。

「備品の補充はやっておくよ。守山さんは、どうぞ上がって」

 同じくER勤務だった管野さんが、さらっとそう言ってくれる。空気を読んでくれたのだろう。

 龍臣さんに、いつまでもここにいてもらうわけにもいかない。
 私は申し訳なくなりつつも、彼に甘えることにした。

「ありがとうございます、管野さん。お先に失礼します」

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