恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 私は急いで入力作業を終わらせて、パソコンの電源を落とし席を立った。
 明日の朝の備品補充は、私がやろうと心に決めながら。

 それから、急いでナースステーションを出る。すると、不意に龍臣さんの手が私の腰に伸びてきた。
 それで、ナースステーション内から小さなどよめきが起こる。

 ついどぎまぎしてしまったが、龍臣さんは私の耳元で、いつもの淡々とした口調で私に告げた。

「時子さんの面会、今ならまだ間に合う」

 なるほど、彼は祖母のところに一緒に向かうために、私を迎えに来てくれたらしい。

 龍臣さんとの結婚に愛のないが、彼は私との約束を忠実に守ろうとしてくれている。
 彼は私が思っていたよりもずっと、この結婚に真面目に向き合おうとしてくれているようだ。
 その事実は、素直に嬉しい。

「ありがとうございます」

 私は彼にそう告げ、異様な空気をまとったナースステーションを出た。

 それから、一週間が過ぎた。

 彼との同居生活は、思っていたよりもずっと居心地がよい。
 龍臣さんは私の私生活には干渉しないうえ、食事だけはいつも用意してくれるのだ。

 相変わらず、夫婦茶碗も使い続けていた。彼はいつもそこに、ご飯をよそってくれる。

 食事のたびに父と母を思い出し、その様子と目の前にいる龍臣さんが重なってしまう。
 私たちの結婚に愛はないけれど、黙々とその器でご飯を食べる彼の様子は、彼が私の気持ちを汲んでくれているようで嬉しかった。

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