恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 彼は相変わらず、いつもと違う人懐っこい笑みを浮かべている。だけどそれが、今日は頼もしい。
 彼の演技がうまくて、本当によかったと思う。

 しばらく話していたけれど、看護師に呼ばれて私たちは芦田先生の待つ面談室へと向かった。

「守山時子さんの、現在の状態についてですが――」

 私も彼も医療従事者ということで、専門用語を交えての説明が行われた。この程度なら、予後も問題なさそうだ。

 しかし話の最後で、芦田先生は複雑な顔を私に向けた。

「おふたりなら十分に理解されているとは思いますが、医療に一〇〇パーセント大丈夫、ということはありません。九十九パーセント順調でも、残りの一パーセントが命取りになることもある」

 彼の言葉に、胸の奥が急激に冷たくなった。

 医療の世界にいたら耳にする、当たり前のことを言われただけだ。
 だけどいざ自分が患者家族という立場になると、その言葉はとても重いものに変わる。

 たった一パーセントが、それだけ怖いのだ。

 膝の上に置いていた手を、ついぎゅっと握りしめてしまう。
 すると龍臣さんは、私のこぶしに自身の手を重ねてくれた。

 愛のあるふりかもしれない。
 だけどちょっとだけ、冷えてしまった心が温かくなるような気がした。

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