恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 面談室を出て、祖母の待つ病室へと戻る。
 その道中の廊下でも、彼は私の手を握っていてくれた。

 しかしそれでも、芦田先生に言われたことが頭の中をリフレインする。

『九十九パーセント順調でも、残りの一パーセントが命取りになることもある』

 祖母に元気になってもらうために、彼と結婚した。
 だけど、祖母に花嫁姿を見せることが叶わないことも、あるかもしれない。

 つい悪いほうへと気持ちが引きずられ、落ち込みそうになってしまう。
 だけど、こんな顔で祖母の病室に戻るわけにはいかない。

 私はどうにか笑顔を浮かべようと、口角を何度が上げて笑顔をつくる練習をした。

「こんな時でも、またそうやって――」

 龍臣さんの呆れたような声が頭上から聞こえたが、私はそれを遮って口を開いた。

「おばあちゃんに、こんな顔を見せるわけにはいきませんから」

 口元に力を入れて笑顔をつくっていないと、不安が決壊してあふれてしまいそうだ。
 彼の言葉に動揺し一瞬でも気を緩ませたら、その瞬間に涙がこぼれてしまいそうだった。

「だって私は、幸せいっぱいの新婚夫婦なんですよ?」

 愛のない偽装の夫婦だけれど、そんなの祖母には関係ない。祖母に元気になってもらうためには、幸せいっぱいの自分でいなければならない。

 そう決意を込めて、彼を見上げた。

 しかし、彼の顔を見ることはできなかった。繋いでいた手を、突然引かれたのだ。

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