恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 どのくらいそうしていただろう。
 私の涙が止まると彼は腕を解き、ポケットから取り出したハンカチを差し出してくれた。

「もう大丈夫そうだな」

「はい。ありがとうございました」

 私はハンカチを受け取らず、自身の服の袖でごしごしと拭った。

 落ち込んでいた気持ちが切り替わっただけでない。
 なんとなく、心が軽くなったような気がする。

 だけど、こんな時間を取らせてしまうなんて迷惑だったろう。
 これ以上、彼の迷惑になるわけにはいかない。だから、ハンカチは受け取らない。

 笑みを浮かべて見せると、龍臣さんはくすりと笑う。

「そっちの顔のほうが、断然いい」

 それからハンカチをポケットに戻し、再び私の手を取って歩き出した。

 彼は私が思っていたよりもずっと、優しい人なのかもしれない。
 そんなことを思いながら、私は彼とともに祖母のいる病室まで戻った。

 祖母はずっとウェディングドレスのカタログを眺めていたらしい。
 私たちが部屋に入ると顔を上げ、早速声をかけてくる。

「ウェディングドレスって、白色だけじゃないのね。桃色、薄水色、クリーム色。とってもカラフルで、なんだかおばあちゃんが楽しくなっちゃったわ」

 興奮気味に話す祖母を見ていると、先ほどの泣きそうな笑顔を見せなくてよかったと余計に思う。
 龍臣さんのおかげだ。

 私はありがとうの意を込めて、彼に目くばせする。
 龍臣さんはちょっとだけ驚いた顔をしたけれど、すぐに小さく頷いてくれた。

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