恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 それから面会時間いっぱいまで祖母と話し、病室を出た。窓の外はすっかり暗くなっている。

 祖母に元気になってもらうために決めた結婚だけれど、祖母と心から笑って話せたのは彼のおかげだ。
 温かな気持ちでエントランスへ向かっていると、二階の渡り廊下の近くで不意に彼が口を開いた。

「詩音、すまない。少しERの医局に寄っていいか? 明日の朝までに読みたい本があって」

 ベイショアERは渡り廊下の向こうだ。医局はERの二階にあるから、ここからが一番近い。

「わかりました。あそこで待っていますね」

 私は階段近くにある長椅子を指差した。

「あ、待っている間、先ほどのカタログを見せてもらってもいいですか?」

 どうせ待っているなら、祖母が『いい』と言っていたものを私もきちんと見ておきたい。
 そう思って告げると、彼は鞄からカタログを取り出した。

「悪いな」

 私がカタログを受け取ると、彼は早足で渡り廊下へ向かってしまう。
 私は長椅子に腰掛けカタログを膝にのせて、そのままペラペラとページを捲った。

 ふわりとしたドレスたちは、見ているだけでわくわくする。
 祖母が素敵だと言っていたのは、この辺だったはず……。

「あれ、詩音さん?」

 不意に名を呼ばれ、階段のほうを振り向く。
 そこには、龍臣さんとよく似た、眼鏡にスーツをまとった人物――龍臣さんのお兄さんが立っていた。

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