恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 だが、彼の言葉につい私のスイッチが入ってしまう。

「患者の搬送先は――」

光前寺(こうぜんじ)総合病院。うちじゃないよ」

 丸井さんは私の考えなどお見通しのようで、そう言って笑った。
 この病院に患者が運ばれてくるのではないかと私が焦ったのも、彼はわかっているのだ。

 私がほっと安堵の息をもらすと、お兄さんが口を開いた。

「ドクターヘリも拝見したかったのですが、出動中なら仕方ないですね。後日、改めて」

 フライト待機室を後にし、エレベーターで一階に戻る。

「私たちが使う部分は、これでほとんどです」

 エレベーターが閉まり、彼に告げた。すると、お兄さんは私ににこっと微笑む。

「ありがとう。龍臣がどんなところで仕事しているのかわかって、楽しかったよ」

「そうですか」

 つい淡々とした返事になってしまった。すると、お兄さんはくすりと笑う。

「詩音さん、なんか龍臣に似てきた? 僕につれなくない?」

「……別に、そんなことありません」

 そう答えたけれど、顔をふいっと逸らしてしまった。

 妙な緊張感が、胸の鼓動をおかしくしている。動揺して、ボロを出すわけにはいかない。

「僕がこのタイミングでベイショアERに来たことを不審に思っているのかもしれないけれど、安心して。僕はただ〝今後のために〟来ただけだから」

 彼はそう言うと、わざと私の視界に入り口角を引き上げる。
 だがその瞳は、鋭く細められていた。

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