ぼくと世界とキミ

「魔物は人には懐かない。いつか本能のままにお前を食い殺すぞ」

可哀想だが彼女のために心を鬼にしてそう言うと、ライラは悲しそうに瞳を揺らして俺を見つめた。

「……どうして?この子が人を襲うかなんて分らないじゃない」

そう言ってライラは魔物の子供を抱き締める。

「魔物は人を襲う。魔物は……人間の《敵》だ」

「人間だって魔物を襲うじゃない。この子だって生きているのよ?心だってきっとある」

そう言い切った彼女の穢れを知らない強い眼差しが、真っ直ぐに俺に向けられた。

……彼女の心はなぜ、こんなにも美しいのだろうか。

まるで聖女の様に、命ある全ての者に平等に愛を注ぐ。

でも俺はそんな彼女が……時々、憎くもあった。

人はそんなに綺麗には生きられない。

彼女の口にする言葉は、穢れの無い美しい物だが……所詮は戯言。

……ただの幻想に過ぎない。

「……私が育てる」

彼女の決意は固いらしく、どうやっても覆せそうにない。

「……勝手にしろ」

冷たくそれだけ言うと、そのまま彼女を残して城へと戻った。
< 179 / 347 >

この作品をシェア

pagetop