ぼくと世界とキミ
「魔物は人には懐かない。いつか本能のままにお前を食い殺すぞ」
可哀想だが彼女のために心を鬼にしてそう言うと、ライラは悲しそうに瞳を揺らして俺を見つめた。
「……どうして?この子が人を襲うかなんて分らないじゃない」
そう言ってライラは魔物の子供を抱き締める。
「魔物は人を襲う。魔物は……人間の《敵》だ」
「人間だって魔物を襲うじゃない。この子だって生きているのよ?心だってきっとある」
そう言い切った彼女の穢れを知らない強い眼差しが、真っ直ぐに俺に向けられた。
……彼女の心はなぜ、こんなにも美しいのだろうか。
まるで聖女の様に、命ある全ての者に平等に愛を注ぐ。
でも俺はそんな彼女が……時々、憎くもあった。
人はそんなに綺麗には生きられない。
彼女の口にする言葉は、穢れの無い美しい物だが……所詮は戯言。
……ただの幻想に過ぎない。
「……私が育てる」
彼女の決意は固いらしく、どうやっても覆せそうにない。
「……勝手にしろ」
冷たくそれだけ言うと、そのまま彼女を残して城へと戻った。