ぼくと世界とキミ

「これから……どうするつもりだ?」

そのジルの問い掛けに、少し視線を泳がせる。

……これからどうするのか。

その事については、実は一つだけ考えていた事があった。

それはあまりにも甘過ぎて砂糖を舐める様な秘密の作戦だけど、でもはたしてそれを……ジルに言ってもいいのだろうか。

また……甘いと言われるかもしれない。

……いや、絶対言われる。

「怒らないから……言ってみろ」

フラフラと視線を泳がせる俺を見てジルは大きな溜息を吐くと、まるで子供を諭す父親の様な台詞を口にした。

まぁ大抵大人の《怒らないから言ってみろ》は、言った直後に怒られるフラグがビンビンだけど……この際、それは無視する事にする。

「俺はできる限り……戦いたくない。戦えば……誰かが傷付けば傷付くほど世界は崩壊に向かう」

その俺の言葉に、ジルは腕を組んだまま静かに耳を傾けている。

「俺、ずっと実感が無かった。世界が崩壊するって漠然としたもので……たいして考えてなかったんだ」

そう言って窓から空を見上げると、さっきまで出ていた美しい月は、今では黒い雲に隠れてしまって見えない。

「でもこの前の地震、その後の異常気象……世界は確実に終わりに向かっている」

その俺の呟きと共に……急に雨が降り始めた。

それは次第に強くなり、激しく窓を叩きつける。

「マナが暴れているんだ。あの地震も異常気象も……マナが」

俺は微かに……マナを感じる気がした。

何となくだけど、マナは俺の近くに居る様な気がする。

マナの気配を感じる気がした。

「戦う事はマナを加速度的に狂わせる。それはできるだけ避けたいんだ。……だから……俺は……」

そこまで言って天井に向けて手を伸ばすと、それをギュッと強く握り締める。
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