ぼくと世界とキミ
「あ、あのさ……ちょっとだけ手、貸してくれない?」
勇気を振り絞って声を掛けると、セリアは小さく首を横に振って両手を隠す様に後ろに回した。
それはまるでこれから何が起こるのか分かっている様に思えた。
そう……多分セリアは知っている。
これから起こるこの世界の未来や……それから《定められた運命》とやらの事も。
そんな事を考えながらセリアの左手を掴むと、それを俺の目の前に引き寄せる。
「やめてってば!ロイ!!」
その叫びは無視し、左手の薬指にそっと……《指輪》を嵌めた。
セリアの白くしなやかな指に、クリスタルの指輪が太陽の光でキラキラと光る。
その指輪は測った訳でもないのに、セリアの指にピッタリと納まった。
それすらも初めから定められていた運命とでも言うのだろうか。
セリアの指に光る指輪を見つめたままそんな事を考えていた次の瞬間、茫然と指輪を見つめるセリアの瞳から……ポロポロと涙が零れた。
セリアは笑っている様にも苦しそうに歪めている様にも見える不思議な表情を浮かべたまま、ポロポロと涙を流し続ける。
そんな彼女の腕をそっと引き寄せ、強く抱き締める。
するとセリアは驚いた様に目を見開き、でもそれからギュッと俺の体を抱き締め返してきた。
「……私……私は……」
セリアそう声を詰まらせたまま泣き続ける。
そんな悲しい彼女の姿を見つめたまま、小さく口を開く。